【リヤド】サウジアラビアの裁判所は、同国の女性に事実上禁止している自動車運転を認めるよう求める訴えを審理することに同意した。訴えた女性の弁護士が明らかにした。



　活動家たちは長年、女性の自動車運転をサウジ政府に求めたり、まれに少数の女性があえて法執行を試す目的で道路に出て運転を試みたりする程度だったが、裁判所に訴えたことは女性運動家の活動方法の転換を意味する。



　サウジでは、過去1年間の近隣アラブ諸国の民主化運動「アラブの春」とはおおむね無縁で、2011年半ば以降、女性の運転認可に対する限定的な要求が数少ない活動項目の一つとなっている。

　



　32歳の女性コンピューターコンサルタント、マナル・アッシャリフさんは昨年、「ウィミン・ツー・ドライブ」という小さな運動組織を立ち上げた。アル・シャリフさんは今回、訴訟を起こした一人だが、保守的なサウジで一般市民や当局者から反発を受けるリスクもある。



　シャリフさんは、サウジでは1990年代初めの第一次湾岸戦争の時期に女性の運転認可要求運動が開始されたが、何ら突破口も開けなかったとし、今回こそ戦術を変える時だと述べた。シャリフさんは「あれから22年経った」と述べ、「今回はやりとげねばならない」と語った。



　政府当局者はこの訴訟に関するコメントの要請に応じなかった。



　サウジでは女性の運転を禁止する法律はなく、同国のアブドラ国王も女性の運転に何も悪いことはないと述べている。しかしイスラム教の厳格なワッハーブ派信奉者が建国したサウジでは、女性は一律に運転免許証を禁止されており、背くと罰金や投獄、ないしむち打ちの刑に処される。



　禁止支持派は、関係のない男女の関わりを抑止しているコーランの厳格な解釈に沿っていると主張している。国王の諮問機関に対する昨年12月のサウジ学者の報告では、女性に運転免許を与えると、広範囲にわたり未婚サウジ女性の処女性が失われるだろうと述べている。



　これに対し運転認可賛成派は、女性の運転の実質的禁止によって、何百万人にも上るサウジ女性に過酷でコストのかかる制約が課されているとし、男性ドライバーに対する年間何千ドルもの支払いが強要され、運転には親戚の男性に依存するか、あるいは家に引きこもるしかないと反論している。



　シャリフさんが昨年、この運動を開始したのは、自動車を自ら運転したり、運転しているところをビデオ撮影させたりしたことで逮捕され、サウジの裁判所から1週間以上の禁錮刑を受けたことによる。逮捕された当日、シャリフさんは免許証の申請を出した。サウジ当局者はこれを拒否したり、申請を無視したりした。そこで彼女は11月、免許証を拒否した当局者の対応を不服として裁判所に訴えた。



　シャリフさんは、身の安全のために訴訟の事実を明かさないようにとの弁護士の忠告に従って黙っていたが、別のサウジ女性サマル・バダウィさんが今週末、別個に訴訟に踏み切ったことから、名乗り出た。



　サウジでは女性は表舞台に出ないのが普通だが、シャリフさんは5日、米ＣＮＮと英ＢＢＣテレビに出演し、訴訟の事実と主張内容を明かした。一部の運動関係者は、女性のドライバーが一層の禁錮刑ないし他の処罰から保護されるには、このように国際的な注目を集めることが不可欠だ、と述べている。



　シャリフさんの弁護士アブドルラーマン・アルラヒム氏は6日、政府に対する市民の苦情を審理する裁判所（「苦情処理庁」という）が女性運転に関する訴訟の審理に同意したと述べた。女性ドライバーに対する訴追は通常、宗教裁判所が扱っている。



　女性の運転認可の可能性が開かれる兆候もある。とりわけ、地元新聞は5日、サウジ当局が女性の運転など社会問題を扱う委員会を創設するだろうと報じている。



　政府はこの報道を確認していないが、女性運転の訴えが宗教裁判所から苦情処理庁にシフトするかもしれないとの指摘は、賛成・反対両派にとって驚きとなっている。



　リヤド在住の学者でブロガーでもあるエマン・アル・ナフジャン氏は「これはすごいことだ」と述べ、女性の運転問題に関する国際的なメディア報道に当惑したことが今回の動きの契機になったのかもしれないと述べた。

　





(この記事は海外総合（ウォール・ストリート・ジャーナル）から引用させて頂きました)

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